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がんのリハビリテーション普及に向けて
     
 

 
   
 2006年6月に制定された「がん対策基本法」では、 基本的施策として、がんの予防及び早期発 見の推進、研究の推進等と並んで、がん医療の均てん化 (どこでも高い医療の質を提供すること) の促進等が挙げられ、専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成、医療機関 の整備等、がん患者の療養生活の質の維持向上を行うことが、国、地方公共団体等の責務である ことが明確にされました。
   
がん対策基本法(2006年6月成立)
概  要  
がんの対策のための国、地方公共団体等の責務を明確にし、基本的施策、対策の推進に関する計画と
厚生労働省にがん対策推進協議会を置くことを定めた法律。  
   
基本的施策
 1.がんの予防及び早期発見の推進
 
がんの予防の推進
 
がん検診の質の向上等
 2.がん医療の均てん化の促進等
 
専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成
 
医療機関の整備等
 
がん患者の療養生活の質の維持向上
 3.研究の推進等
   
 
 病状、進行度に合わせて、その時点でベストな治療を受ける権利が患者さんにはあるというこ とが謳われていますが、現実には、 “ がん難民 ” という言葉に代表されるように、医師や病院によっ て、薦める治療法が全く異なったり、治療成績に格段の差があったりすることが、いまだ日常的 に起こっています。
 厚生労働省にはがん対策推進協議会が設置されましたが、国や地方公共団体等、行政面での取り組みはやっと始まったばかりであり、 治癒を目指した治療から QOL を重視したケアまで、切れ目のない 支援をするといった点で、今の日本のがん診療はいまだ不十分であるといえます。
 近年では、一般市民や患者さん向けのがん医療情報に関する特集がテレビや雑誌で企画されたり、がん医療に関するウェブサイト 1 ) 2 ) が立ち上がったり、一般の方向けの本 3 ) が出版されたりして、が ん自体に対する治療のみならず、症状緩和や心理・身体面のケアから療養支援、復職などの社会的な側面にも関心が向けられ始められつつあり、情報社会の到来とともに患者のがんへの知識が深まり、 医療に対する消費者意識が根付きつつある現在、 “ がんと共存する時代 ” の新しい医療のあり方が求められています。  
 2015 年を迎えるにあたって、今後はがん今後、大学病院や一般の急性期病院や地域医療においても、がん予防から終末期まで様々な病期におけるがんの患者さんに対するリハビリのニードはさらに高まっていくこ とが予想されます。
全国でばらつきなく、高い質のリハビリテーション医療を提供するためには、行政・関連学会・がん専門 医療機関・患者会など、立場の垣根を越えた幅広い取り組みが必要です。以下に現在の課題と今後の 取り組みをまとめました 4 ) 5 )
 
   
1. がん医療に取り組む施設でのリハビリテーション資源の充実
 
@がん診療連携拠点病院におけるリハビリ専門職の増員
 
(専従のリハ担当医、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等)。
 
A がん診療連携拠点病院間 のスタッフ間の交流・連携体制(教育・臨床・研究)。
 
B地域総合病院におけるがんのリハビリの専門性(知識・技術)の向上。
   
2. 診療報酬算定上の課題の克服
 
@リンパ浮腫治療に関する診療報酬算定困難。
 
A周術期呼吸リハビリにおける呼吸訓練器(インセンティブスパイロメトリ)算定困難(自費購入)。
 
B緩和ケア病棟・ホスピスでの理学・作業・言語聴覚療法算定困難(包括医療のため)。
   
3. がんのリハビリテーションの啓発・普及活動。
 
@リハビリ医療やがん医療に関連した学会等の学術団体や行政(厚労省がん対策推進室)における、がんのリハビリ普及のための取り組み
 
(一般市民や医療関係者への啓発活動のため公開講座・講演会・研修会の開催等)。
 
Aリンパ浮腫治療や喉頭摘出後の代用音声訓練など、がんの後遺症に応じて、全国の専門外来や患者会との情報共有や協力体制を確立。
   
4. 学術活動(臨床研究・論文・教科書)
 
@ 質の高い(ランダム化比較試験など)研究を計画・実施し、本邦から世界へ発信。
 
Aがんのリハビリテーションに関する日本語の教科書のさらなる出版。
   
5. がんのリハビリのガイドラインの作成
 
@エビデンスに基づいた がんによる身体障害(後遺障害)予防や治療のためのガイドラインの策定。
 
A公的研究費の活用・学会主導の取り組みが必要。
   
 
【参考文献、ホームページ】
1)
2) 
がんサポートキャンペーン  http://www.nhk.or.jp/heart-net/support/
3)
辻哲也: 第5章進行がんと生きる がんのリハビリテーション. 日経メディカル(編): がんを生きるガイド, pp154- 155, 日経BP社, 2006.
4)
辻 哲也 : がん治療におけるリハビリテーション:将来と今後の課題 . 辻哲也 ( 編 ): 実践!がんのリ ハビリテーション , pp223-225, メジカルフレンド社 , 2007.
5)
辻哲也 : がんのリハビリテーション最前線 現状と今後の動向 . 総合リハビリテーション 36: 427- 434, 2008.